荒井 幸治郎 さん
生年月日 1922(大正11)年4月20日
新潟県新発田市生まれ
海軍
所属 武山海兵団、三重海軍航空隊、館山海軍砲術学校、空母「信濃」、第7艦隊司令部
兵科
戦地 内地、大連
・生まれてすぐ佐渡島に。
○1937(昭和12)年 兄を頼って東京に出る
・軍隊行く前は、あのね、えーっとアルバイトだね。学校行くに、昔のアルバイトってのは、どっかの書生みたいにほら住み込み。それでそっから学校行くの。それで結局ね、人より2年ぐらいちょっと遅れました。水道橋から神保町の方へ行くと、右側に研数っていったの、むかーしからあったの。今も焼けなかったからちゃんと残ってる。そこへね、ようするにどっか編入しなきゃいけないから、数学とか漢文とかああいうのを短期間に。それやって、英語があっから、英語は神田の三崎町に習いに行って、それからまあある学校へ3年で編入したと。勉強なんかしない、とっとっとっと。
・日本大学専門部商科に入る
・勉強なんかしない。あの当時勉強する時代じゃないもん。戦争、昭和18年頃は。僕はもともと勉強嫌いだからさ、えへへへ。だから3人、1人だけ大学行ってノート持って来るから、ノートを写して、あとは喫茶店で、レコード買ってきて今のカラオケじゃないけどレコードを聞いたりね
○1941年(昭和16)12月8日、日米開戦
・そんな深く感じないよ。よそでやってんのかってぐらい。戦争はねえ、そんなに意識しないなあ、うん。あのね、面白い事にさ、天皇陛下は神様みたいなもんでさ、あれさえおればねえなんて思って。だってみんな病気になると、宮城の前で拝んでたよむか〜し。うん。あそこ行って、病気になると土下座して、神様。それはあの、ほんとに神様だと思って
・そうするうちに学生が持って行かれたでしょ、学徒出陣っつって。あれにやられたの
・それで臨時召集で、一応、徴兵検査を受けるわけだけどね、それで新潟まで行って、甲種合格で、海軍がいいか陸軍がいいかと言われ、陸軍は五箇条とかあるから教育中に覚えなきゃいけないから、そんなの頭悪ぃから覚えないって。五箇条がある。海軍はね、一つ一つなになにとか、頭だけ覚えればいいの。陸軍は一つの理由はなになになになにやって、また二つ。五箇条、あれはね、教育中にみんな覚えなきゃいけないっていう話だった。だからもうそんなもの嫌だから、海軍行きゃあ、鉄砲もいらねえし駆け足もねえやっていって。ところが、裏目に出た
●1943(昭和18)年12月 武山海兵団に入団
・行く時はね、なんだったか、なんとなく行った。戦争の意識がなかったなあ。僕が昭和12年に東京に来た時には、支那事変、上海事変の時代だから、あのへんからね、チンドンやって、勝って来るぞとなんとかって出征兵士を送ったでしょ。それ見てるけれども、自分が実際に寄せ書きの日の丸をこう十文字にかけて出て行く時なんか、なあんだ、軽い気持ちだったね。あのね、僕っていうのはね、ちょっと変わってんの。人が死んでもね、俺は死なないって。だから恐いと思わなかった。死なないと思ってた
・海軍の教育というのは、あれはね、格子なき牢獄っつったようでね、今の自衛隊は、暴言をはけども暴力はない。軍隊はもう口よりも手のほうが早いから。それでだいたい10人いて1人でも失敗すると、10人みんなやられちゃう。連帯責任だから、これ絶対曲がったこと何も出来ない。人に迷惑かかるから。ホントにうまくできてる
・それで、兵隊行くと大変だよということは聞いてたけども、武山行った。ほしたらね、お客さんみたい大事にしてくれる。みんな嘘だと、大変だってことは。3日たったら、ガラッと変わっちゃった。「てめえらお客さんじゃねえよ」と口はこんなになっちゃって。それから今度は「軍人精神を入れてやる」とかって、これはもうものすごいです。それで海軍てのは5分前の精神て、海軍だと5分前じゃないとダメだと。だからのろい奴はこう10分って。それで「総員起こし」、5分前、「総員越こし5分前」っちゅうとその間に全部用意しとく。それで吊床ってあるでしょ、あれを納めるとこがあるの。そこへ時間で納めるんだけれどもね、いっくら早くやったって駄目なの。時間足りないようになってる。だからすぐ戦闘に向くようになってるわけ、すぐパーッと行くよう、その訓練のために時間がない。それでトイレ行くっていったて時間があるでしょ、それでとんとんつったって入ってる。そのうちにもう顔も洗わないで、なにもしない。だからもうぼけーっとしてるのが、そういう世界だからいろんなことがある
・入浴でも兵舎から裸足で行くの。靴履いてくと、自分の靴わかんなくなっちゃうから、無くなるから、もともと裸足で。それで大勢で入るからね、湯船がこうでしょう、それで「入れーっ!!」っちゅうとこっち入って行く。ね。そのうち「上がれーっ!!」っちゅう。そうすっと、前の方が上がった頃に、後ろの人はこれから入ろうっちゅうんだよ。上がれだから、入んねえうちにわかんない。それから洗う場所も競争だ、大勢いっから、極端に言えば。何もしないうえに、こんど「風呂あがれーっ」っつうんだから
・軍隊の世界はねえ、もうやくざの世界。普通の常識じゃ考えられない所。だからみんな生き地獄っていう。格子なき牢獄っていう。牢獄だよ。だからよくねえ、年配の下士官がやってる。あれも子供いるのに、奥さんもいるのにとまあ、あんなもんになっちゃうのかなあと思ってた。年中そう思ってた
・お前銀バイ出来るかと。出来ないっちゅうと大変なことになると思って、「はい行きます!」つったら、「よおし!」つって泥棒になる。そしたら今度烹炊所へ行って、肉持って来いとか、砂糖持って来いとか、だからかっぱらいよ。それ出来るかちゅうて、こっちはそれ知らないから「はい!行きます!」って
・出来ないっつったらあれだろうねえ、「こんにゃろう!」なんつって、「また気合いれてやろうか」なんて言われて。だからなんで殴られるんだか分かんねえんだよ。言い訳出来ないから、一方通行だから。だから僕なんかもう短期間で、みんながそういう道歩いて来るんだかどうだかちょっと分かんないけれども。なにしろ時間足んないようになってる。なんでもあの海軍するのはとにかく5分前だから。5分前兵舎離れっちゅうともうその時点じゃ遅いんだよ。その前に準備してる。ぱあーっと。だから戦闘に間に合うようにしてる。吊床のハンモックのあれだって、競技やったって、1分なんかで出来っこないんだよ。なんでもね時間足んないようになってる。出来ないタイムでやらせるわけよ。だから即戦力にできるように、教育してるわけ、そういうふうに
・そこで今度は試験があったの。試験があって、それで三重の航空隊。そこにいったら士官の見習になった
・
●1944(昭和19)年2月(※推定) 三重海軍航空隊へ
(※大学専門部在籍中の学徒出陣なので第一期飛行専修予備生徒か?)
・氷張って、越中ふんどしがね、しらみ、凍ってるんだよ。凍ってるとこで洗濯なんか出来ない、それでも洗濯。それで干したって、洗濯物取り入れるとってもう、生乾きであろうがなんでも取り入れる。なにしろもうそういう世界だから
・三重の航空隊入って、航空関係の要するにパイロットだね、あの教育に入ったの。
・分隊長が、学生上がりのパイロットで、大尉だったかな。あとやっぱりね、われわれみたいなのが、少尉中尉くらいのが、その下でわれわれに直接やってる
・我々の同期でも上智大とか東大とかね、精神的に弱いから、泣く、まあ泣きはしないけどね、落ち込んじゃう。病気になっちゃうし。頭はそりゃいいよね、精神的な問題が、うん。仮に肺炎になったって医者にかかるわけじゃねえ、あの、兵舎のすみっこ置いて
・数学だったら高等数学。要するに風速とかいろんなあれがあるでしょ、今のコンピューターがないから、防寒服でね、それでモールス信号。それで海軍は、陸軍と違って、誰が病気になって死んだって、船の上じゃ予備いないんだから。戦時中だから予備つまない。だから1人いなくなりゃ、誰かそれを今度みんな代わる。とにかくそれぞれ万能になっちゃう。なんでも出来なきゃだめ。それで信号、海軍はね、発声語(※?)で信号覚えた。「ノ」だったらね、「ノギトーゴー」これ覚えるわけよ。そうするとすぐ自分で、海岸に向って声枯れるぐらいにね、「あ」から始まるの。でモールスの練習。そうすると、発光がバッバッと出ると、「ノ」がでたら、「ノギトーゴー」すぐ分かっちゃう。それで「ハ」だったら「ハーモニカ」って、それを頭に打ちこんじゃう。それで今度誰がやっても「ハーモニカ」でこれは「ハ」って。それから、あの、「ン」だったら「ンーメーナー」とかね。そんなのがあるまた。「ロ」だったら「ロジョーホコー」とかね。今もう忘れたけど。そういう教育があるわけ。いろんな信号あるよ。吹き流し。あれ全部覚える
・それからカッター、ボート。ボートなんかもう皮向けて、ケツがね、越中ふんどしじゃもう熱い、みんなくっついて剥がすの大変。それでも毎日これやんなきゃ。横着出来ない。横着するとね、すぐ分かるの。見てると、漕いだ時に、渦巻いてるか巻いてないか見てる。手抜くと、こう足がついてね、渦巻かないでしょ。ちょっと手休むと、オールがね流されちゃうの。ぎゅーって。みんな足がついて、自分の首ついちゃうの。もう戻さないよそれ。それで岸壁に着くとこう竿みたいなこういうのあるでしょ、ひっかけるやつ、ほら寄るやつ、爪竿っつって。あれ持っててね、「こんの野郎」っつって
・三重の教育の時にね、トイレの中で俺煙草吸ったの。みんな交代でね、甲板士官なるのね。それでもういねえだろうと思って、出て来てたばこ吸ったらまだ火がついてて、同期に「貴様ァ!!」なんつってさ、そうでまたむこうはバンバンバン
・ちゃんとね、受け身があんの。怪我させたりなんかすっと軍医がかかってきて罰せられちゃうの。だから受け身があるんだよ。最初は歯を食いしばれとか、ちょっと頑張れとか言ってもらって、それでお願いしますってやって貰って、終わったたらありがとうございますって言う。だか、普通の常識じゃないんだよ
・それから食事するにも当番、当番はみんな訓練して帰って来る前に、もうご飯のとこで用意してる。それで、むこうから持って来て、人数分だけ持って来て、こう詰めるわけ。そうすると当番だから、自分のを山盛りするわけいかねえから。自分のは少なめにする。それでおかずも下のほうに隠して、自分の少ないようにする。ほんとは多いんだけどつめちゃう。そうすると班長見てて、「番号変えっ!!」っつって、それでそっちの人はこっちいっちゃう。だからばれちゃう。そういうことも出来ない。それで班長に、たくあんならたくあんで綺麗な所、梅干もちゃんとしたものを班長に出す。それを知らないから、なんでもいいやっつうと班長来て、ひっくりかえしちゃう。食事がお預けになっちゃう。なにしろうまーく出来てる。断片的になるけど、いろんな罰もあるから
・で巡検って、みんなこう寝るでしょ。そうすると今度は、「巡検終り、煙草盆出せ」っつうの。「巡検終り」って何も分かりやせん。寝てんのになんで起きて煙草吸う。「巡検終り、煙草盆出せ」ってこういう号令がある。そうすると表にワクがあってそこに砂がある。そのワクのとこへ、知らないから足かける。ほうしたらまたやられる
・特攻隊とは知らないから。先輩に聞くと、あの野郎行ったけれど、まだ戻ってこねえよ。戻らないわけだよ。だからおかしいんだよ、東大とか、優秀な学校を出て、ね、人間魚雷みたいに。そんなの刑務所にいる奴ら乗っけてやらせりゃいいのに。優秀な人間を、特攻隊、ねえ
・お腹が空くでしょ、それで外出するでしょ。そうするとね、大体ね弁当持ってくんだけれども、食べる所は士官だからね、お寺の軒下とかそんなとこじゃ駄目だとか、ちゃんと劇場行ったら1等席で見ろとか、それで外出したら下向いたりキョロキョロするなとか
・そしてねえ、特攻隊だったら僕はもうとうにいない人間なんだから。だからあの、いろんな学問でも、サインコサイン、商科だからね、サインコサインなんて分かんないから、方程式なんてみんな忘れちゃったから
・それで適性検査がある。そうすると今度は面相、顔、手相。それで死相現われてるとクビになっちゃう。飛行機乗れない。僕なんか、もうみんながね、1人じゃないけどねえ、目が痛てえとかね、目が見えねえとか何とか言ったって、適正にかなわねえ。で1人だけ。何人かくらいで、目が見えねえとか、1人じゃだめ。そうすっとどっかに、なんか教育場で、なんか目が悪くなるからなんとかって、適性検査があるんですよ
・適性、適正を逃れるわけ。教育中にね。そうしないと鹿児島に行っちゃう。それで特攻。だいたい初めそういう情報分かんないから、一生懸命やるけれど、だんだんだんだんすると、悪知恵じゃないけれど、面相とか手相とか死相があらわれると、もう入れない。あと操縦のあれが出来ねえとか、適正がないとか。教育中なんかこう言われたよ。「てめえらは1銭5厘」だって。1銭5厘てハガキが1銭5厘。1銭5厘で召集されてるわけ。だから「てめえら1銭5厘」だって、こういう言葉使う。あの当時の葉書が一銭五厘。召集令状
・適性検査クビになると罷免だからね。だから2等兵曹で、下士官。下士官のが楽だね。こんなことやってて、これなんかね外出したらさ、かなり年配の兵隊がさ、2人だとね、隊伍でね、「歩調とれ!!」っつうとね、こうして「頭あー右ッ!」ってね、こっちは照れ臭い。軍人精神入ってねえからっつって、ようするに答礼だよね。2人だったらもう歩調とれ。だから照れ臭い。だから古参兵とつきあってるといろんなこと教えてくれるわけ。だからそういうのを手元におくという。僕なんかね大体ね、洋服屋、散髪や、手元に置いといた。従兵みたいに。そうすっと、アイロンかけてくれたり、訓練終わると洗濯をしてくれる。あれは「させてくださいッ!!」ってくんだからしょうがない。両国の相撲のあれと同じだよ
・適性検査で外されて今度は館山の砲術学校
●1944(昭和19)年○月 館山海軍砲術学校へ
・海軍てよく知らないから、館山ってとこはひどい所だぞっつうた。鬼より怖い館山っつったんだからね。そしたらね、もうすごいの。目がもうね、ギラーッっとしたのがこう立ってんの。すごいなあー、こっちはまだ、兵隊の「へ」もね、何も分かんない、ヒョロヒョロっと行くんだからさ。気が抜けたようなのが来る。糸が切れた凧みてえなもんでね、梁もなんにもねえ、そういうとこへ、えーこら嘘だあと思った。そこはね、教育する場所だから、戦闘に行って仮に船が沈没した、まあ何人か残ると、「休業」っつって、そういうとこへ、教育の方へやられて来ちゃう。だからそういうの、戦火くぐって来た兵隊だから。それであそこなんか、もうねえ、教育がすごい。いろんなことがある
・あとね、余談だけれども、大砲なんか高角砲、これ八サンチ、その訓練やる。それで指揮官がね、棒10本位ある。それで我々が10本作る。その棒がなんだっつったら頭叩くための棒なの。それで痛いから、ここへ、帽子のとこへね、手ぬぐいをこうやるんだよ。そうすると叩かれるでしょ、音で分かるの。入ってる音と入ってない音、全然違うんですよ。だからパーン。絶対変なそういう横着なことなんにも出来ない
・指揮棒なんて作る時には、兵隊が作る時には、それは叩くためにあるんだ。指揮棒じゃねえんだよ。叩くために10本位。それでわざとね、枝生えるとこの、ふしだ、あれがあるとね、あれが沢山あるやつを作るの。そうすると叩くとすぐ折れちゃうんですよ。だから折れねえとそれでバンバンバンバンやられるから、ふしの多いのをね、作っとく。そして、帽子にね、手ぬぐいなんか入れないで、みんなほら入れるから、みんな痛てえからここへね手ぬぐいこう入れて帽子かぶってる。叩くと音が違うでしょ。だからそれも、最初やったんだ
・スコップ持って防空壕掘ってた。そしてこれ(※手)がね、ばい菌入っちゃって、こんな腫れた。これ医者にかかるったらまたなんか怒られるかなあと思って、だけどもうね、寝れなくなったの。それで、しょうがねえから軍医にかかった。今だったらもう麻酔くらいするよね、しないよ。こんな腫れちゃって膿がこう。ピンセットでね、ブサアッと刺す。これと、それからどの指だ、これかな、こっちか、これ、高角砲の弾を充填ちゅうて、弾をこう入れるんだ、こうやってこうやって。それで装填棒って棒で押すんだけど、それで入れて、尾栓がカチッと閉まる。それが入ったつもりが、ダダダダーッと下りて来たの。で落とすと大変だから、これでこれで押さえたら、この爪が駄目になっちゃった
・それで卒業する時に、絶対沈まない船に乗っけてやるから、もう1人連れて来いって、2人で。で、行ったのが、これに乗ったね
****** 以下その2へ続く *********
取材日 2013年8月1日